「受験勉強のやる気が出ないのですが、どうすればいいですか?」
恐らく全ての学生が持つ悩みでしょう。
今の世の中、いざ勉強しようと思っても、
・SNS
・TV
・ゲーム
などにダラダラと時間を溶かしてしまい、自分を律して勉強と向き合うには、誘惑が多いことも事実です。
そこで今回は、脳科学的に勉強のやる気を引き出す秘訣について、その本質を突き詰めていこうと思います。
勉強のやる気が出ない本当の理由
「勉強しなければいけないことは分かっている。」
「それでも勉強のやる気が出てこない。」
きっと多くの人はそう悩んでるはず。モチベーションは、決して気持ちだけで維持できるものではありません。
結局のところ、モチベーションは、主に「ドーパミン」という脳内物質によってもたらされます。
すなわち、”中脳辺縁系の「側坐核」と言われる脳の部位がドーパミンで刺激されると、モチベーションが上がる”というのが脳科学的な結論です。
またその他にも、
・ノルアドレナリン:不快を避ける役割を担う
・セロトニン:心の安定や調整を行なう
といった脳内物質の働きもモチベーションを高く保つに重要だと言われています。
このように、モチベーションは脳内物質と深い関わりがあるため、モチベーション維持のためには脳科学的なアプローチをとることが大切になってきます。
ここでは「これらの脳内物質が上手く働かないがために勉強のやる気が出ないケース」について、よくありがちなモノをお話ししていきます。
精神的・肉体的疲労の蓄積
さて、まず最初に”当たり前”のお話をしておきましょう。
「疲れているときにやる気など出るはずがありません。」
脳科学的にも、脳が一番やる気を出さない時は「寝不足の時」とする説さえもあります。
また、「勉強」というのは、私たちにとって
・苦手なモノ
・新しいモノ
ばかりであり、それに取り組むというだけでも脳には大きく負担がかかっているということも分かっています。
特に勤勉な人ほど忘れがちなことかもしれませんが、
「疲れているときにもやる気を出そう」
と考える方がもしいるのであれば、少し考え方を改めてみる必要があるかもしれませんね。
勉強の先の目標がない
何のために勉強しているのか、勉強の先の目標がはっきり見えていないと、モチベーションは上がりません。
特に中学生や高校生の方は、「勉強が将来にどう役立つのか」など説明されず、ただ大人に押し付けられるままに学習していることも多いと思います。
まずは、勉強をしたその先に何があるのか具体的に思い描いてみてください。
勉強という行為そのものに目を向けるのではなく、
- 勉強を頑張ったら自分にとってどんなメリットがあるのか
- どんな輝かしい未来を手に入れることができるのか
を想像するのです。その結果、脳の線条体が活性化して、行動する意欲に結びつくというわけです。
勉強はその先の目標が見えないと、モチベーションなど出てくるはずがないのです。
勉強の仕方が分かっていない
勉強の仕方が分からないという人に、勉強のやる気は起きません。
いざ勉強に取り掛かろうと思っても、しなければならないことが膨大過ぎて何から手をつければ分からず、結局何の進捗も生むことが出来なかった、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
- 勉強する気になってきた。
- 頑張って成績を上げたい。
漠然とそう思っていても、その具体的な手段がわからなければ達成のしようがないため、本当のモチベーションに繋がらないのです。
線条体は運動のコントロールにも関わっているので、「運動野」や「前運動野」が動き出すことでも活性化されます。
そのためには、「これからやらなければならないことを具体的にイメージする」ことが必要となってきます。
簡単な話、勉強計画が具体的に練られていないことには、「やる気」以前の問題だということです。
結果を出す喜びを知らない
「勉強のモチベーションがなかなか上がらず、思うように勉強に取り組むことが出来ないため、成績が上がらない。」
もし、このように成績が上がらない原因をモチベーションのせいだと考えている人がいれば、それは因果関係から根本的な間違いがあるかもしれません。
すなわち、
モチベーションが上がらないから結果が出ないのではなく、
結果が出ないから、モチベーションが上がらないのです。
結果を出したときに喜びを感じ、その快感から脳内に「ドーパミン」が分泌され、モチベーションが生まれるのです。
行動と快感が結びついてこそ人間は行動を起こすことができるのです。
つまり、勉強のモチベーションが上がらない本当の理由は、
「これまで結果を出したことが無く、結果を出すことの喜びを知らないから」
という可能性もあるのかもしれませんね。
「やる気」はやるまで一生出てこない
さて、ここまでいくつかの「勉強のやる気が出ない事例」についてお話してきましたが、最終的に「やる気」はここに集約されると思っていただいて構いません。
“ドーパミン”は実際に行動を起こすことにより分泌されます。
結局、「とりあえず、やる。」が全てなのです。
逆に、行動を起こさない限りは分泌されず、やる気は湧いてきません。
ここで、「やる気を出すためには、まずやらなければならない」というジレンマが発生し、この障壁を乗り越えないことには、「やる気」は一生湧いてこないということになります。
そもそも「やる気」という言葉は、「やる気」のない人間によって創作された虚構なのです。
つまり、私たちが普段からアテにしている「やる気」とは幻想のようなものであり、そもそも何かをやる前からやる気を出すことは不可能なのです。
脳科学的には、「行動することでしかやる気は引き出せない」ということは是非覚えていただけると良いかもしれません。
脳科学的に勉強のモチベーションを上げる5つの方法
以上の話からお分かりいただけると思いますが、モチベーションはただ待っていて自然と湧いてくるものではありません。
自分から行動してみない事には何も始まらないのです。
では、
「モチベーションを上げるために行動することが必要なら、最初に行動するためにはどうすれば?」
そう考えるのが自然でしょう。
ここでは”最初に行動する”ための5つのヒントをお話ししていきます。
ともかく寝る
やる気が出ない原因が「疲労の蓄積」なら、ともかく寝てみるのも一つの手です。
最近では眠気に負けないようカフェインやエナジードリンクなどを利用して勉強に取り組む人も多いようですが、やはり脳科学的に見ればあまり合理的とは言えません。
眠たくなるのは、思考や言語、記憶などを司る大脳皮質の働きが落ちてきた証拠です。
昼寝・仮眠によって脳を瞬間的にクールダウンすれば、こうした認知機能が回復し、さらに気分を和やかにするセロトニンや、脳に快感を与えるドーパミンが分泌されることが分かっています。
睡眠欲は人間の本能であり、それに抗っても仕方がありません。
「眠い時は寝る」
という勇気も時として必要なのかもしれませんね。
>>関連記事:勉強にベストな睡眠時間とは-睡眠時間を削って勉強するのは本当に有益なのか
努力の対価として「報酬」を設定する
人がやる気を出すのは「報酬への期待を感じた時」だと言われています。
例えば、難関大学に合格すれば、
・就職に有利になる
・将来圧倒的に生きやすくなる
という報酬を得られることは、今の日本社会を見れば容易に想像されるかと思います。
このように、目標を達成したあとの報酬を意識することでも脳はドーパミンを分泌し、やる気や決断力・思考力を向上させてモチベーション維持につながるのです。
また、“目標を達成したあとの自分に「具体的なご褒美」を与える”ことも有効であり、脳がどうしてもやる気を出さないときには意図的に報酬を与えるシステムをつくるべきとも考えられています。
例えば、
・この課題が終わったら、好きなYouTuberの動画を1本見る。
・試験で良い成績を取ったら、試験が終わったあとに前から欲しかったバッグを買う。
などのように、
自分がやる気になるような具体的な報酬を設定してみるのも良いかもしれません。
目標達成までのプロセスを明確にする
与えられたテキストや問題集が山積みにされていると、その圧倒的な分量を目の前にしてやる気は喪失されがちですよね。
そんな中でもやる気を引き出すためには、「どのような手順を何段階踏んでいけば物事の達成に至るのかを最初に把握しておくと良い」と言われています。
例えば、
「テキストを300ページ読む」という課題はとても大変なように感じますが、
「1ヶ月毎日10ページずつ読む」さらには
「毎日、午前に5ページ、午後に5ページ読む」と言われれば、なんだか出来そうな気がしてくるはずです。
勉強のスケジュールが曖昧な人は、一度手を休めて具体的な進行や段取りを考える必要がありそうです。
学校の先生や塾の講師などの力を借りながらで構いませんので、
できるだけ細かく、現実の行動を結びつけながら想像力を働かせて、目標達成の具体的なプロセスについて考える時間を取ってみてください。
ゆるい目標から立てる
前述のとおり、明確な目標を持つことはやる気の原動力になります。
しかし、高すぎる目標を設定して「叶わない」と感じてしまうと、モチベーションが落ちてしまうので注意が必要です。
そこで脳科学的にオススメの手法が、
目標値の上下に幅を持たせる『レンジ法』という目標設定の方法です。
ひとつの到達点のみに固執してしまったばかりに、目標達成が困難に感じられて挫折を招いてしまうことはよくあります。
例えば、最初から「今日は10ページ進めるぞ」を意気込んでしまうと、いざ行動を起こす時に「10ページなんて無理かも」と怖気づいてしまいます。
そこで、「今日は5ページから15ページくらいまで進めよう」と目標に幅を持たせることで、5ページまでは簡単にこなせそうな気がしてくるはずです。
このように目標値の上下に幅を持たせると、
「その下限にはたやすく到達できるだろう」
という思いで、少しばかりはやる気を引き出せるのではないでしょうか。
そんなことしたら、目標の下限に達したところで満足してしまいます・・・。
そうお考えになる方もいらっしゃるかもしれません。
確かに、「現状維持で良い」と考えた瞬間にドーパミンは分泌されなくなってしまうため、やる気の喪失につながってしまいますが、そんなことを考える余裕があるのであれば、目標の下限に達したところで
「じゃあ、もしかしたらここまで出来るかもしれない。」
と新たに幅を持たせた目標を更新してあげると良いでしょう。
ともかく、ここで大切なのは「やる気を引き出すこと」。
そのためにも、まずは”ゆるい目標から立てる”ことを意識してみてください。
まずはテキストを開き、最高目標の箇所に付箋などで印をつけます。「ここまでできるのが理想だけど、できなくても問題ない」と軽い気持ちでいることがポイントです。そして、最低ラインの目標箇所にも印をつけましょう。そこは「いくらなんでもこれならすぐにクリアできる」くらいの低い目標であることがポイントです。
動き出すきっかけを作る
さて前述した通り、「やる気」はやるまで一生出てきません。
つまり、ここまでしてきたお話は全て
「とりあえず、やる。」
に結びつけるための方法論に過ぎないワケです。
とりあえず動くことが大切であるとわかったところで、ここからは最初のアクションとして何をするべきかを考えていきます。
まずは手っ取り早く、一番簡単なことから始めましょう。最初のハードルは楽々と飛び越えられるものがいいですね。
例えば、1ページだけ読むつもりで参考書を開きます。読み進めるうちに心理的負担が軽くなり、「この勢いであと3ページ進めようかな」とエンジンがかかってくるのです。
ドイツの心理学者・クレベリンは、この状態を「作業興奮」と名づけました。作業興奮が発生するのは、動き始めてから5分~10分程度と言われているので、
「とりあえず5分だけやろうかな」と軽い気持ちで行動すれば、
「いつのまにか30分以上たっていた!」
ということもあるかもしれません。
また、動き始めるきっかけは勉強以外でも構いません。机の上を整理するなど勉強する環境を整えることからスタートすれば、その行動に気持ちが後押しされるはずです。目に入る余計なものをしまったり、落ち着いて勉強ができるアイテムを揃えたりするなど、自分の集中力を高める環境を把握しておくといいでしょう。
手足を動かすことも脳の側坐核に刺激を与えて、ドーパミンが分泌されます。スポーツのウォーミングアップのように、軽く身体を動かすだけでもじわじわとやる気になってくるので、ストレッチをするのもおすすめです。
ともかく、やる気を引き出すためには「如何にして作業興奮を引き起こすか」という視点を大切にしてみてください。
>>関連記事:作業興奮とは-勉強前の「面倒くさい」は”とりあえずやる”で乗り越える
最後に:モチベーションは「今のあなた」が作り上げる
モチベーションを上げるために大前提として置いておくべきマインドは
「然るべき行動をすれば、然るべき結果を出せる。」
ということです。
勉強、特に受験などというものは、先人の築き上げた知恵をそのままなぞるだけで解決できてしまうものです。
もちろん、「なぞるだけだから簡単だ」とは微塵も思いませんが、究極的に言ってしまえば、適切な思考・行動をすれば、適切な結果が出るようになっている、というのは事実です。
過去に望ましくない種を蒔けば、当然望ましくない結果が再現されます。
逆に、原因を追究すれば、結果は必ず出せます。
これこそが、モチベーションという障壁を乗り越えるための重要なマインドになるのです。
厳しい言い方をすれば、物事には必ず「原因」と「結果」があり、今あなたにモチベーションが無いのであれば、それは過去のあなたが作り出した悲惨な現在です。
視点を変えれば、モチベーションのある未来は今から作り上げることが出来ます。「未来のあなた」にモチベーションがあるかどうかは、「今のあなた」にかかっているのです。
「努力したけど結果が出ず、モチベーションが続かず辞めてしまった。」
そうして継続できない理由を″モチベーション″に帰着してしまうのは、思考が浅い証拠です。「モチベーション」や「飽き性」などのせいにするのはとても簡単なことなのです。
何故結果が出ないのか、もっと深く、思考する。
結果を出すことが簡単なはずがありません。だから皆苦労するのです。
ただ苦労するからこそ、それを乗り越えた人が頭一つ抜ける。
世の中はそういう仕組みになっています。
「もうしんどい。」
「もうやめたい。」
そう思ってからが本番なのです。
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