こんにちは。クリリンです。
様々な分野の研究や教育を行う「総合大学」とは異なり、医学のみを取り扱う単科大学を「医科大学」と呼びます。
国公立総合大学の医学部の入試問題は他学部と同じ問題が出題されるため、とりわけ難問・奇問が出題されるわけではありません。
ところが、医科大学の入試問題は国公立であっても医学部受験生に特有の問題を作成するため、かなり難解な英文が出題されたり、非常に高度な思考力を要するような、いわゆる難問・奇問が出題されたりもします。
今回は、そんな国公立単科医科大学の大学入試について偏差値ランキング順に前期日程の入試難易度をまとめていこうと思います。
全国に医学部は82校ありますが、国公立医科大学は以下の9校です。偏差値はすべて「医学部受験マニュアル」が公表するものを掲載しています。参考までに偏差値の欄に全82校中の偏差値順位も載せておきます。(※2020年5月現在の偏差値)
東京医科歯科大学(国立)

偏差値 | 73.0(4/82位) |
1次試験:2次試験 | 180:360 |
浪人・再受験 | 厳しい |
都心の文京区という立地の良さもあって人気が高い大学です。全国の医学部の中でも最高レベルの偏差値を誇り、その入試難易度は旧帝大医学部を凌ぐものかもしれません。2次試験重視型なので、2次試験に特化した対策が必要となります。理科は物理・化学・生物から2科目選択します。
入試問題傾向
英語と数学に関しては、やや難易度の高い問題が出題される上、問題量に対する制限時間があまりにも短すぎます。英語では非常に長い長文を早く丁寧に読解し、数学では計算量のある煩雑な問題を素早く解くなど高い処理能力が必要です。
理科に関しても、短めの制限時間で幅広い難易度の問題が散りばめられているため、自分の解ける問題を取捨選択し、効率よく得点を取ることが求められるでしょう。
奈良県立医科大学(公立)

偏差値 | 70.7(7/82位) |
1次試験:2次試験 | 900:450 |
浪人・再受験 | かなり寛容 |
再受験にやさしい大学です。全国的にも非常に高い偏差値が必要で、その入試難易度は旧帝大医学部に追随します。1次試験重視型なので、1次試験の対策が重要となります。理科は物理・化学・生物から1科目選択します。
偏差値が非常に高くなっているのは前期試験の枠の狭さや後期試験の受験者層の高さが要因となっているのだと考えられます。
入試問題傾向
制限時間が英語・数学・理科合わせて180分とされており、自分で時間配分を決めることができるというかなり特殊な設定となっています。
数学に関しては、問題の難易度自体は標準的ですが計算に時間のかかる問題が多いため、素早く正確に解く能力が必要です。空欄補充の完答式の問題が多く、計算ミスも致命傷となります。
英語と理科に関しても、問題は標準的な設定となっているので、確実に得点を取りながら如何に時間を配分できるかが合格の鍵となるでしょう。
京都府立医科大学(公立)

偏差値 | 70.2(12/82位) |
1次試験:2次試験 | 450:600 |
浪人・再受験 | 厳しい |
長い歴史を持つ伝統あふれる医科大学で、これもまた全国的に非常に高い偏差値が必要となり、その入試難易度は旧帝大医学部に追随します。少し2次試験を重視する比重ではあるものの、バランスの良い対策が必要となるでしょう。理科は物理・化学・生物から2科目選択します。
入試問題傾向
京都府立医科大学の入試問題は、全国屈指の超難問が出題される大学として知られています。それもあって合格点はかなり低めです。
特に英語と数学に関しては非常に高度な理解と応用力を要求され、特別な対策をしない限り到底手に負えるものではありません。
理科に関しても相当な学力を要する問題が多く、難しい問題に対して少しでも得点を稼いでいくことが重要となります。
和歌山県立医科大学(公立)

偏差値 | 68.8(21/82位) |
1次試験:2次試験 | 600:700 |
浪人・再受験 | 厳しい |
地元志向の強い医科大学です。少し偏差値は下がってきますが、それでも全国的にみれば高い学力が必要とされることに変わりはありません。1次試験と2次試験の比重がほとんど同じであるため、バランスの良い対策が必要となります。理科は物理・化学・生物から2科目選択します。
入試問題傾向
とりわけ制限時間が厳しいわけではありませんが、すべての科目において問題のクセが強く、難易度は標準~難です。
近年、特に数学は難化傾向にあり、他科目にもよりますが5割取れなくても合格ラインには達するといわれています。
ただクセがあるとはいえやはり一定の傾向もあり、難しい問題の中に標準的な問題が多くあるので、そこで如何に確実に得点を取れるかが合格への鍵となります。
滋賀医科大学(国立)

偏差値 | 67.3(32/82位) |
1次試験:2次試験 | 600:600 |
浪人・再受験 | かなり寛容 |
比較的入学しやすい医学部の中でも再受験に対してかなり寛容ということで知られています。1次試験と2次試験の比重が同じであるため、バランスの良い対策が必要です。また、1次試験の国語の配点が200/600点とかなり高いことも大きな特徴です。理科は物理・化学・生物から2科目選択します。
入試問題傾向
重厚な難問が多く、難問・奇問が出題されがちな医科大学の代名詞とでもいえるかもしれません。
英語では分量の多めな長文問題や語数をかなり必要とする自由英作文などが出題され、数学でも高度な思考力と膨大な計算量を要求されます。
特に理科に関しては、物理で微積物理が出題されたり、生物で教科書に記載されていない事項が出題されたりなど、高校指導要領範囲外の知識を問われたりもします。
平易な1次試験でしっかりと得点を取った上で、2次試験で部分点をいかに稼げるかが勝負となります。
今後、出題傾向に大幅な変化がみられるかもしれません。
札幌医科大学(公立)

偏差値 | 67.3(32/82位) |
1次試験:2次試験 | 700:700 |
浪人・再受験 | 厳しい |
1次試験と2次試験の比重が同じであるため、バランスの良い対策が必要となりますが、2次試験の配点のうち100/700点は面接による評価となります。公立なので地元志向の強い大学ですが、経営母体は「札幌市」ではなく、あくまでも「北海道」です!理科は物理・化学・生物から2科目選択します。
入試問題傾向
典型的な問題もありますが、全体としては見慣れない出題がされる傾向にあり、難易度は標準~やや難です。試験時間も短いため、自分の解ける問題で確実に得点を取らなければなりません。
1次試験で9割近くの得点を確保した上で、2次試験で6割5分くらいの得点を取ることが合格最低ラインになるでしょう。
また、面接の得点も見過ごせません。面接の採点では北海道内の生徒が優遇されがちとなるので、他県からの受験には注意が必要です。
浜松医科大学(国立)

偏差値 | 67.3(32/82位) |
1次試験:2次試験 | 450:700 |
浪人・再受験 | かなり厳しい |
学士編入試験の実施により、再受験には厳しい対応がされます。つい最近まで1次試験の配点がかなり高い大学として知られていましたが、配点が変更されて2次試験重視型となり、1次試験の得点で逃げ切ることが難しくなりました。2次試験の配点のうち100/700点は面接による評価となります。理科は物理・化学・生物から2科目選択します。
入試問題傾向
浜松医科大学の入試の特徴は何といっても、制限時間の厳しさによるスピードテストです。
数学に関しては、最近は易化傾向にあるといわれるものの、それでもなお条件が煩雑な問題が多く、その難易度はトップレベルです。その出題に対して、大問4題を90分という時間で解かなければなりません。また、医学部では珍しい単元である「データの分析」が出題されたり、大問4題中3題が証明問題だったりと、突発的な出題に対しても対応する必要があります。
英語と理科は難易度は標準的ではありますが、やはり制限時間はかなり厳しく設定されています。考えている暇はありません。
このような入試形態なので、合格点は低くなります。1次試験で確実に得点を確保した上で、面接の対策も含めて2次試験で少しでも多くの得点を稼ぐ実力をつければ合格点に達することができます。
福島県立医科大学(公立)

偏差値 | 65.3(63/82位) |
1次試験:2次試験 | 650:660 |
浪人・再受験 | かなり厳しい |
入学のしやすさからかは不明ですが、公立の割には東北・関東・東海・近畿などの県外からも人気の高い医科大学です。1次試験と2次試験の比重がほぼ同じであるため、バランスの良い対策が必要となります。2次試験の配点のうち60/660点は面接による評価となります。理科は物理・化学・生物から2科目選択します。
入試問題傾向
福島県立医科大学は英語教員に充実していることもあり、英語の入試にはかなり力が入っています。問題自体の難易度が高いわけではないですが、その採点がかなり厳しいこととして知られています。
数学に関しては問題自体の難易度は高めですが、問題の条件設定はわかりやすいものが多いため、数学が得意な受験生には差のつけどころかもしれないですね。
理科に関しては比較的標準レベルの問題が多いです。特に物理は平易で満点も狙えます。物理・化学選択が有利でしょう。
全体的に問題の難易度は標準~やや難で、多少の1次試験の失敗はひっくり返せるほど2次試験が重要な傾向にあります。もちろん、面接の対策も忘れずに。
旭川医科大学(国立)

偏差値 | 65.3(63/82位) |
1次試験:2次試験 | 550:350 |
浪人・再受験 | 厳しい |
日本最北端の医科大学で、気候や立地条件の悪さからもその人気は低め。そんなワケもあって入試難易度は易しめとなっています。地元志向が強く、一般入試の定員は削減されつつあります。2次試験の配点のうち150/350点は面接による評価となります。理科は1次試験では物理・化学・生物から2科目選択しますが、2次試験での理科の試験はありません。
入試問題傾向
数学は典型的な問題からかなり難易度の高い問題まで幅広く扱われています。典型題で確実に得点を取った上で難問題でも部分点を稼ぎたいところです。
英語に関しては、問題自体は典型的で問われることは単純なことが多いです。しかし採点は厳しめといわれており、的確な回答が求められます。
またこの大学入試で最も重要なのは面接です。面接官3人、受験生5~6人で25分間のディスカッションが課せられます。5項目について1項目あたり10点ずつ、3人の面接官に評価され150点満点です。とても大きな配点があるので、重点的な対策が必要となります。
まとめ
いかがだったでしょうか。
単科医科大学と一言でいっても、様々な特徴があるということがお分かりいただけたと思います。
単に問題が簡単な大学が入学しやすいという訳ではありません。問題が易しければそれだけ合格に必要な得点は高くなりやすいです。それぞれの大学の入試問題傾向を理解して、自分の得意分野に合わせた志望校選びが大切となります。
また評判通り、単科医科大学はクセのある難問題を出題するところが多いですが、合格のポイントとなるのは難問題の裏に隠された基本題を確実に解くことであることがほとんどです。
このブログではこのような単科医科大学を含め、難関大学・医学部を目指す高校生・受験生を応援しています。勉強のポイントをまとめているので是非ご一読ください。
>>関連記事:京大医学部ブログ-逆転合格体験記-最初に伝えておきたいこと
コメント