こんにちは。クリリンです。
「整数」は大学入試においてかなり頻出の分野で、難関大学・医学部においても毎年出題されるところもあるくらいですね。
他の分野と比べると解法に多彩性がある単元で、そこに統一性を見出すことはなかなか難しく、その出題方法はまさに無限大です。
ただし出題方法が無限大とはいっても、その根底に隠された解法にはやはり一定の傾向があるもので、難関大学・医学部で出題されるような「整数」の問題はそれらの解法を如何に組み合わせて解くかという問題が非常に多いんです。
今回は「整数」の問題を解けるようになるための根底となる解法について、大学入試で出題された難問・良問に沿って解説していきます。
整数の解法は3つ
「整数」の解法として受験生が覚えるべきなのは以下の3つです。
- 積の形に持ち込む
- 範囲で絞りこむ
- 合同式
もちろん、これより他に「ユークリッド互除法」や「p進法」などの小技は身につけなければなりませんが、これらの小技を使用する上でその根底にある考え方は上の3つで完結してしまうのです。
従って、今回はこの3つの解法についてお話していきたいと思います。解法を習得するのに絶好な大学入試問題も解説しながら進めていきます。
積の形に持ち込む
お茶の水女子大学にしてはかなり易しい問題ですね。
「積の形に持ち込む」というのは整数は約数に分解できるという性質を利用する解法です。
まず与えられた方程式のままでは少し扱いづらいので、式を整理します。
1/x + 1/y = 1/p
⇔
xy – px – py = 0
僕の場合、この時点で「積の形に持ち込む」という解法が思い浮かびます。
xy + 〇x + △y + ▢ = 0 という形はまず間違いなく「積の形に持ち込む」です。この形を見ても解法が思い浮かばない人は必ず習得しておきましょう。
xy + 〇x + △y + ▢ = 0
⇔
(x + △)(y + 〇) = ◇
xy – px – py = 0
⇔
(x – p)(y – p) = p2
これがいわゆる「積の形」です。通常、文字を約数に分解することはできませんが、今回の問題ではpは素数という非常に重要な条件が与えられているため、右辺のp2は約数に分解することができますね。
あとはその分解した約数のうち、かけあわせてp2になる約数の組合せを考えることによって問題を解くことができます。x, yは正の整数なので x – p>-p, y – p>-p であることに注意すると
(x – p, y – p) = (1, p2), (p, p), (p2, 1)
の3組が考えられます。従って、求める答えは
(x, y) = (p+1, p2+p), (2p, 2p), (p2+p, p+1)
このように整数の問題では「積の形に持ち込む」ことによって解くことができる問題があります。特に“素数”や“互いに素”というワードが出てきた時は積の形に持ち込んで、約数に注目することにより解くことができる場合が多いです。
範囲で絞りこむ
非常に有名な問題です。
「範囲で絞りこむ」というのは整数は稠密(ちゅうみつ)性に低いという性質を利用する解法です。
「稠密性」というのは数と数の間がどれだけ詰まっているかということです。例えば1と5の間で考えてみましょう。
実数の範囲で考えると1と5の間にはまさに無限個の「数」があります。しかし、整数の範囲で考えると1と5の間には2、3、4の3個しか「数」がありませんね。数学の世界ではこのような整数の性質を「稠密性に低い」と表現します。この性質を利用して実際に問題を解いていきます。
まずx, y, zには対称性があるので大小関係をつけて考えても一般性を失いません。0 ≦ x ≦ y ≦ z である場合を考えましょう。
このとき、1/x ≧ 1/y ≧ 1/z ≧ 0 という関係になります。ここで、1/x があまりに小さいと問題の条件式のy, zに当てはまる自然数がなくなってしまいます。従って、1/x がとることのできる最小値を考えてみましょう。
1/x が小さくなるということは 1/y, 1/z が大きくなるということですよね。つまり、1/y, 1/z の値が 1/x の値に近ければ近いほど 1/x の値は小さくなるということです。
すなわち、x = y = z の時に 1/x が最小値をとるということが分かると思います。従って
1/x + 1/x + 1/x ≧ 1/x + 1/y + 1/z = 1
⇔
1/x ≧ 1/3
1/x の最小値が 1/3 であることが分かりました。この時xの範囲は
x ≦ 3
これによってxを範囲で絞りこむことができました。整数の稠密性の低さを利用すると、自然数xは1,2,3のどれかであるということが分かります。
- x = 1のとき
1/y + 1/z = 0
これを満たすy, zは存在しません。 - x = 2のとき
1/y + 1/z = 1/2
xの範囲を絞りこむ時と同様に考えると
1/y + 1/y ≧ 1/y + 1/z = 1/2
この時yの範囲は
y ≦ 4
整数の稠密性の低さを利用すると、0 ≦ x ≦ y ≦ zより自然数yは2,3,4のどれかであるということが分かります。このうち式を満たす(y, z)の組合せは
(y, z) = (3, 6), (4, 4) - x = 3のとき
1/y + 1/z = 2/3
xの範囲を絞りこむ時と同様に考えると
1/y + 1/y ≧ 1/y + 1/z = 2/3
この時yの範囲は
y ≦ 3
整数の稠密性の低さを利用すると、0 ≦ x ≦ y ≦ zより自然数yは3のみであるということが分かります。式を満たす(y, z)の組合せは
(y, z) = (3, 3)
これで(x, y, z)の組合せはすべて求めることができました。最後にx, y, zの大小関係は自分で勝手につけたものなので、それを取っ払うことで解答を導くことができます。
(x, y, z) = (2, 3, 6), (2, 6, 3), (3, 2, 6), (3, 6, 2), (6, 2, 3), (6, 3, 2), (2, 4, 4), (4, 2, 4), (4, 4, 2), (3, 3, 3)
このように整数の問題では「範囲で絞りこむ」ことによって非常に重要な情報を得ることができます。
他にも整数は実数であることから判別式を利用して範囲を絞りこんだり、分数式が1を超えないなどの条件から範囲を絞りこんだりする例が多く見受けられます。
合同式
ちょっとレアな問題かもしれませんね。
「合同式」というのは整数は余りで分類できるという性質を利用する解法です。
8を法とする合同式で考えます。
一般にある整数kについての剰余類を考えましょう。
k≡0のときk2≡0
k≡1のときk2≡1
k≡2のときk2≡4
k≡3のときk2≡9≡1
k≡4のときk2≡16≡0
k≡5のときk2≡25≡1
k≡6のときk2≡36≡4
k≡7のときk2≡49≡1
以上より、どんな整数であってもそれを2乗して8で割った時の余りは0、1、4の3通りしかないことが分かります。これらの組合せを考えると
l2 + m2 + n2 ≡0, 1, 2, 3, 4, 5, 6
を取り得ることになりますが、どのような組み合わせを取っても余りが7になることはありません。しかし6543を8で割った時の余りは7です。従って、これを満たすl, m, nは存在しません。
「なぜ8の合同式なの?」と聞かれたら、僕もわかりません…(笑)
ただ1つ言える事は、僕の経験上8より大きい数で合同式を使ったことはありません。
よく使用される数としては3、4、8が挙げられます。また偶数と奇数で分類するためにはmod 2 も使用しますね。
このように整数の問題では「合同式」を利用することによって解くことができる問題があります。特に文字の累乗が出てきた時や、素数について「2が唯一の偶素数である」という性質を利用する時に多く活躍してくれます。
まとめ
整数は以下の3つがポイントとなります。
- 積の形に持ち込む
→整数は約数に分解できる - 範囲で絞りこむ
→整数は稠密(ちゅうみつ)性に低い - 合同式
→整数は余りで分類できる
整数問題では、この3つを解法の切り口として意識していくことが大切です。これらを自在に操れるよう演習を積んでいきましょう。
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