こんにちは。クリリンです。
大学受験に数学を使用する人であればほぼ誰もが知っているであろう『チャート式』。
昨今では本書に対抗する様々な参考書が出版され始めている中で、なお評価され続けている、まさに受験数学の王道中の王道です。
かく言う僕も、京大医学部に合格する最後の最後までこの参考書を愛用し続けました。
今回は、『チャート式』がなぜここまで広く推奨され続けているのか、その所以をレビューし、受験に『チャート式』が必須の理由についてお話ししようと思います。
『チャート式』の評価
『チャート式』がなぜここまで広く推奨され続けているのか、その理由は主に以下の3つで説明されます。
- 圧倒的な網羅性
- 考え方の「本質」を押さえた解説
- 追求された「分かりやすさ」
以上を深掘りしていきます。
圧倒的な網羅性
『チャート式』を使用する誰もが口を揃えて言うのは、“ともかく網羅性が高い”ということ。
つまり、東大であろうが京大であろうが、基本的にはこの1冊の中に大学入試の問題を解くための鍵は“ほぼすべて“詰まっているということです。
本書は、教科書で扱われているような基本的な問題から、それらを応用させた実戦的な問題まで、幅広い難易度の問題が網羅されており、人によっては“解法の辞書”として活用している人もいるほどです。
そもそも、数学の勉強法の基本は”解法暗記”であり、その”解法”が網羅されている『チャート式』はまさに受験数学の必携本となるわけです。
とりわけ「数学が超絶苦手だ。」という人以外であれば、教科書すら不要、”数学”を学び始める最初の1歩から使用できる参考書となっています。
>>関連記事:解法暗記の落とし穴-解法暗記だけでは問題が解けない理由
考え方の「本質」を押さえた解説
先ほど「数学の勉強法の基本は”解法暗記”」と言いましたが、”解法暗記”で大切なのは、「解法を“理解して”覚えること」。
すなわち「何故そのような解法に至るのか」が理解出来なければ、問題を解けるようにはなりません。
そこで『チャート式』では、問題と解答の間に記された“指針”において、
- 問題の急所はどこにあるか。
- 解法をいかにして思いつくか。
ということを明確に示されており、考え方の「本質」を押さえた解説が丁寧になされています。
ただ問題と解答が羅列されているだけではなく、この”指針”によって、実際に問題を解く立場になった親切な解説が施されており、この解説に則った問題の見方を身に付けることで「数学的思考・数学的センス」を養うことが出来るようになっています。
この”指針”の編集のノウハウこそが、チャート式80年の歴史が凝縮されたものであり、他の参考書の追随を許さない重要なポイントになっているのです。
追求された「分かりやすさ」
例題の模範答案では、指針に関連したポイントを赤字で示すなど、実際の答案作成においてどこを押さえておくべきかが一目で分かるように記載されており、実際に解答を記述する際の「構成力」を養成しやすくなっています。
また、副文(変則2段組みの右側の段の内容)では答案の内容を補足したり、注意事項を示したり、更にはこの例題を発展させた内容や参考事項なども適宜示されていて、どのような論理展開がされているのか、その解説の分かりやすさも申し分ありません。
もちろん、現時点での理解度が人によってそれぞれですので、全員が全員に分かりやすいというわけにはいきませんが、後述の通り、『チャート式』はレベルによって色分けされており、それぞれの理解度に合わせた解説がなされています。
『チャート式』が長く愛され続ける所以は、「分かりやすさ」という参考書として最も根本的な部分に強い信頼があるからなのかもしれません。
『チャート式』4色別レビュー
一般に、『チャート式』と言えば以下の4種類を指します。難易度は、赤>青>黄>白の順。
- 赤チャート(チャート式 数学)
- 青チャート(チャート式 基礎からの数学)
- 黄チャート(チャート式 解法と演習)
- 白チャート(チャート式 基礎と演習)
『チャート式』は長年多くの人々に支えられている良書ですが、その裏では評価・評判に合わせて改訂を繰り返されてきました。ここでは、その新課程版における最新の情報に基づき、具体的な対象レベルについてお話ししていきます。
赤チャート
対象レベル:旧帝大・医学部・東工大・一橋大などの最難関大学を受験する人のうち、特に数学を武器にしようと考えている人。
チャート式数学の中で最高難度のシリーズ。旧課程版はやや使いにくく、評価は今一つでしたが、新課程版になり使いやすさが向上しました。数学の基礎を理解しているのは当たり前という人にとって、頭の回転を速めたり数学的思考力を鍛え上げることが出来るレベルです。他のシリーズよりも解説が端的であるところも、数学の実力者からすればむしろ無駄が省かれて読みやすく、さらなる実力アップにつながるに違いありません。
解説は多少端的になっているところもありますが、扱っている例題自体は青チャートとほとんど同じです。各例題の下にある練習問題は青チャートより少し難しく、章末問題(演習問題)はかなりレベルが上がり、巻末の総合演習は常識破りの難易度です。レベル的には、
・[赤:例題]=[青:例題]=[青:練習問題]
・[赤:練習問題]=[青:章末問題(Exercise)]
・[赤:章末問題(演習問題)]=[青:総合演習]
・[赤:総合演習]=常識破り
大体こんな感じです。
よく、「赤チャートは難しすぎるから大学受験には向かない」という意見を見かけますが、正直なところ、数学を得意科目として最難関大学に挑戦するのであれば是非とも習得おきたいレベル。
「”例題”自体は青チャートとほとんど同じ」ということは、”解法暗記”として習得すべき解法はほぼ同じです。つまり、それらの解法がどのように応用されていくのか、その幅広い知見を1冊で身につけることができ、「思考レベルの水準をあげる」という意味では非常に魅力的な参考書となっています。
ただし、難しすぎて挫折してしまうようでは本末転倒ですので、無理して使うくらいであれば青チャートを使うようにしましょう。
青チャート
対象レベル:旧帝大・医学部・東工大・一橋大・早慶などの最難関大学を受験する人。
チャート式数学の中では赤チャートに次ぐ2番目の難易度。旧課程以来絶大な評価を受けており、進学校の副教材として最も多く使われているのがこのシリーズです。一般に、「チャート」と言えば「青チャート」のことを指すことが多く、まさに定番の色として愛用されていますが、それだけに「思いの外難易度が高い」と感じる人も多く、ある程度数学が出来る人でないと解説されている内容が理解できないかもしれません。
黄チャートの例題以外に章末問題(Exercise)など掲載されている問題を漏れなく解いていくことで青チャートと同様の水準まで引き上げることが可能です。青チャートの場合は関連発展問題・総合演習といった難関大学で頻出の問題を掲載しているので、ここを勉強するかしないかで黄チャートとの違いがでてきます。
青チャートが定番とされる所以は、教科書レベルの基礎問題から最難関大学入試レベルの発展問題をバランス良く揃えているということ。最難関大学を目指すのであれば、最も妥当なレベルと言えるでしょう。
確かに、難易度は赤チャートよりも易しくなっていますが、それは「簡単」という意味ではなく、「基礎」の比重が増えているだけであり、重要な問題が詰め込まれていることに変わりはありません。もう1ランク上の問題集も取り入れれば十分赤チャートにも劣らない成果を出すことが出来るでしょう。
- まずは赤チャートよりも丁寧な解説が欲しいという人
- 最難関大学を目指す上で土台となる参考書が欲しいという人
こういった人たちの場合、まずは「青」を選んでおくのが無難です。「思いの外難易度が高い」と感じることもあるかもしれませんが、青チャートのレベルこそが最難関大学入試レベルの基準になることを痛感しておくのもいいかもしれません。
黄チャート
対象レベル:GMARCHや関関同立、地方国公立などの難関大学を受験する人。
チャート式数学の中では赤チャート、青チャートに次ぐ難易度のシリーズ。旧課程で高い評価を受け、副教材として進学校から準進学校まで幅広く使われています。教科書レベルの問題から入試基礎レベルへの橋渡しとしての役割を持っており、黄チャートができているレベルであれば基本的な大学受験の問題は対応できるようになります。
白チャートは1つの例題で扱う知識をなるべく少なくしており、それに対し黄チャートは教科書基礎レベルなど比較的易しい内容のものは1つの例題にまとめてあります。これが白と黄で難易度に差をつけられているポイントです(なお、この傾向は青チャの方が顕著です)。分類のされ方が違ったり、EXERCISESに載っていたりするものの、扱っている例題自体はほぼ同じです。
赤VS青と比べ、黄チャートからはいよいよレベルの高い典型問題は扱われなくなり、1ランクレベルが下がるといった印象です。ただし、基礎的な問題がより丁寧に解説されている良書であることには変わりなく、”最”難関とは言わずとも、難関大学を目指すのであれば必ず身につけておきたい重要問題ばかりが詰め込まれています。
また、最難関大学を目指す人でも、「数学が苦手で、どうしても青チャートはレベルが高い」というような人は、まず黄チャートで基礎問題の解法暗記を行うと、よりレベルの高い問題にも挑戦できるようになりますし、他の参考書で問題演習を積み重ねれば十分最難関大学にも届く実力を身につけることが出来るでしょう。
青チャートと黄チャートは使っている人が最も多い2つの参考書であり、このどちらを選択するか悩んでいる人は毎年星の数ほどいます。個人的には迷うくらいであれば「青」がおすすめ。思考レベルの基準は自分の使用している参考書に合わせて養われていくため、どちらか迷うくらいの実力があるのならば「青」を選択しましょう。
白チャート
対象レベル:日東駒専や産近甲龍、共通テスト平均点以上を目指す人。
チャート式数学の中では最も難易度が低く、初学者の導入や基礎固めに適したシリーズ。先ほども書いた通り、節の中で問題のパターンがかなり細かく分かれており、多少効率は悪くなりますが、数学が苦手な人には”解法暗記”の知識を一つひとつ丁寧に習得できる内容になっています。
具体的なレベルとしては、公立小学校・公立中学校で習う内容がしっかりと身についていれば理解に躓くことなく独学で進めることができ、最終的には学校の教科書レベルを完璧にこなせるようになるでしょう。
もちろん、「難問の種類」としては白チャートでは足りない部分はありますが、基本例題レベルの網羅性には問題ありません。黄チャートと青チャートというメジャーな参考書に隠れがちな白チャートですが、教科書レベルにも不安を覚えるという人には「白」から基本を押さえていくのも良い選択となるでしょう。
最後に:『チャート式』は常に挫折との戦い
『チャート式』は「圧倒的な網羅性」「解説の丁寧さ」のもと、数学の勉強の土台となる、まさに受験数学のバイブルとして評価され続けているのは間違いありません。しかし、その反面「参考書が分厚すぎる」という点で批判を受けることがあります。
確かに、膨大な分量を目の前にしてやる気が削がれる気持ちも分かりますが、正直なところ、このくらいの量をこなせずして難関大学を受験しようとするその姿勢には少し疑問を抱かざるを得ません。
『チャート式』は常に挫折との戦いであり、その挫折を乗り越えてこそ、数学という学問に対して見える世界が変わってくるはずです。
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